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【ライブレポート】1/13-14 PEOPLE 1 2023~2024 TOUR アリーナ特別公演 at ぴあアリーナMM

TOUR

PEOPLE 1 2023~2024 TOUR アリーナ特別公演

“続・LOVE2”
“さよなら、ぼくらのパーティーゲーム”

2024.1.13(Sat)-14(Sun) 神奈川・ぴあアリーナMM
文:天野史彬 写真:renzo masuda



最後には、愛と呼び得るものが溢れ出していたのではないか。

1月14日、ぴあアリーナMM。「さよなら、ぼくらのパーティーゲーム」と銘打たれたこの日のライブのアンコールで、涙を流しながら「頑張ってきてよかった!」と叫んだTakeuchiの純粋さと、「自分がここに立っていることはまだ、ただの偶然の連続でしかないと思っている」と語ったItoの実直さと、「そもそも誰からも求められてはいなかった」という自らの想像力が生み出す空間を、現実に創造しえたことについて観客たちへの感謝を述べたDeuの創作者としての内省とプライド。根本的な性格や資質があまりにもバラバラに思える3人、しかしPEOPLE 1という運命においては不思議と固く結びついているように見えるこの3人の姿を見ていると、思うのである。ライブ序盤でDeuは「俺たちはBGMに徹する」という旨のことを言っていたが、そのドライな思惑とは裏腹に、最後にステージの上に溢れたのは、人間であり、心であり、愛と呼び得るものだったのではないかと。

もっとも、BGMだと言おうが彼らはステージの上でしっかりと自分たちの人生を見せるつもりだったのだと思う。それぞれの思いを語った後に大学のコピーバンドサークルで出会った3人が(3人だけで)演奏したのは、2日間にわたるライブで唯一のカバー、andymoriの「クレイジークレーマー」だった。この瞬間、アンコール前の「DOGLAND」に至るまでに膨張し続けた巨大な熱狂とカタルシスは一気に濃縮して、小さくも親密なぬくもりに変わった。「世界で一番お前が正しいんだよって俺が歌ってやる みんなの前で」――そう歌うこの曲を、Deuは「世界で一番好きな曲」と言っていた。

1月13、14日の2日間にわたり神奈川・ぴあアリーナMMで開催されたPEOPLE 1のワンマンライブ。全国ツアー「LOVE2」の終着点であるDAY1「続・LOVE2」と、時を同じくして行われた全国ツアー「ぼくらのパーティーゲーム」の終着点であるDAY2「さよなら、ぼくらのパーティーゲーム」。片や「続」で片や「さよなら」、セットリストも衣装も照明演出もまったく違う、異なるコンセプトのもとに行われたふたつのツアーの最終公演(1日目の開演前BGMには「パッヘルベルのカノン」のピアノ独奏が流れ、2日目の開演前には原口沙輔や煮ル果実などのエクストリームなポップスが流れるくらい違った)は、どちらも共にすさまじいライブだった。2日間に共通していたのは演奏しているのがPEOPLE 1であること、そして、ステージ上に作り上げられた巨大なガソリンスタンドのセット。DeuのMCによるとこのセットは「アイワナビーフリー」の歌詞に由来があるという。

ガソリンスタンドから飛び出せ 日々は徒然
惨めな姿でアイワナビーフリー

(「アイワナビーフリー」)

 

Deuは、ガソリンスタンドは「日常」の象徴であると語っていた。その言葉を受け止めて考えるならば、ステージ上に具現化された巨大なガソリンスタンドは日常からの逸脱を表しているようにも思えるし、それでも私たちは日常から逃れることはできない、という現実を表しているようにも思える。天国やお花畑が生み出されるわけではない。リアルが肥大化し膨張した果てに生み出されるファンタジー。それがPEOPLE 1、ということなのかもしれない。ステージに掲げられた巨大な「GAS STATION」の看板は、2日間にわたって物々しい空気を発し続けていた。

1日目「続・LOVE2」は、Deuの弾き語りから始まった。開演時間になり、たったひとりで登場すると、メインステージから伸びる花道を歩いた先にあるセンターステージに設置されたソファに腰掛けた彼がアコギで弾き語ったのは「愛について」。このライブのテーマであり、PEOPLE 1の歌詞世界の最も大きな主題である「愛」について、彼はまず弾き語った。PEOPLE 1初のアリーナ公演の始まりは、盛大な宣誓というよりは孤独な独り言の呟きのようだった。しかし、ただボソボソと呟いていたのではない。Deuの弾き語りは、まるで咳払いや呼吸、緊張やそれが解けていく様子それ自体が表現であるかのようだったし、彼自身の内省の深さや孤独の輪郭を生々しく保ちながらも、同時に巨大なアリーナ会場全体を震わせるパフォーマンスとしても見事に成立していた。ステージ上の表現者として、ボーカリストとして、彼はひとりでとんでもないことをやってのけていた。「何を成すべきか」が彼の中で明確だからできたことだろう。

終始、ソファはステージ側を向いており、Deuは観客たちに向けて歌うというよりは、彼にしか見えないどこか別の場所や対象に向けて歌っているようにも見えた。この1曲目から、PEOPLE 1に対しての観客である私の立ち位置は「目撃する」というものに定まったように思う。そして1曲目を終えると、SEが流れる中ItoとTakeuchi、そしてサポートメンバーであるHajime Taguchiとベントラーカオルがメインステージに登場し、「さよならミュージック」へ。衣装は全員がスーツ。照明が明るくなり、ステージの背後に設置されたモニターにはメンバーそれぞれの顔が大きく映し出される。そもそもは顔出しすらしていなかった3人の表情が、ありありと鮮明に伝わる。そこからバンド全体による怒涛の演奏が始まっていった。Itoはボーカリストとしての豊かな表現力と華やかな存在感を発し、Takeuchiはしなやかでモダンなドラマーとして、柔軟かつパフルな手捌きを見せる。そして、サポートのふたりは演奏に厚みと爆発力、そして数多の色彩を与えていた。

このDAY1のライブ中に、花道を歩きセンターステージまでやってきてパフォーマンスをしたのはDeuだけだった。「悲しくても、苦しくても、心が壊れてしまっても、残念ながら鼓動は止まらないので。立ち直らなくていいので。そのままでいいので。みんなで踊りましょう!」彼はそう言ってセンターステージで「ハートブレイク・ダンスミュージック」を歌った。再びセンターステージのソファに腰掛けた彼は「君に金星」を歌い、「君に金星」と続く「Outro(Because I Love You)」とまるで接続されるようにして、叫びと祈りが混ざり合うような壮大な景色を作り上げた。「新訳:ラヴ・ソング」は本来Itoがメインで歌う曲だが、「今日は覚悟が決まっているから」と、この日はDeuが歌った。そして本編の最後、再びソファに腰掛けた彼は「113号室」を自らの運命と向き合うように歌い上げた。MCでDeuは「アイワナビーフリー」や「フロップニク」、「常夜燈」といった楽曲でアニメーションのミュージックビデオをアリーナのモニターに映し出すことができたことの誇りと喜びを語った。「続・LOVE2」は徹底して、PEOPLE 1の首謀者でありコンポーザーでありコンセプトメイカーであるDeuのメッセージや世界観によって濃密に形作られていた。

この日、Deuはアンコールの最後に、ItoとTakeuchiに「ありがとう」と告げた。「俺が見せたいものはリファレンスがないから、ついてくるのは大変だと思うけど、ついてきてくれてありがとう」と。

 


そして2日目、「さよなら、ぼくらのパーティーゲーム」。シックな1日目とは打って変わりポップな衣装や蛍光色の照明に飾られたこの日、前述したようにDeuは「俺たちはBGMに徹する」と言っていた。「主役はあなたたち(観客)です」と。実際、高揚感に溢れる楽しいライブだった。「Deadstock」ではフィーチャリングシンガーであるきのぽっぽが登場し、Itoとふたりセンターステージで甘く艶やかなデュエットを披露した。サポートメンバーふたりによる獰猛な音のセッションに引き続き始まった「新訳:スクール!!」ではサングラス姿のTakeuchiが花道を練り歩きセンターステージまでやってくると、観客たちを煽りに煽り、煽りまくった末にサングラスをぶん投げてぶっ壊していた。彼は素晴らしいドラマーとしてだけでなく、そのキャラクターにおいてもPEOPLE 1のライブに大切なものをたくさんもたらしていく。

そして、「closer」の冒頭ではDeuがコール&レスポンスを先導し、続く「僕の心」でも合唱が巻き起こった。不器用な魂の歌を、皆で歌う。美しい光景だった。「Takeuchiコール」で迎えられたアンコール。Takeuchiはファンからの寄せ書きが集まったフラッグを持ってステージに登場した。彼は「アンコールのコールでメンバーの名前を呼ぶのも曲を歌ってくれるのもどちらも嬉しい」と言っていたが、そうした繊細な一瞬一瞬に、彼のファンに対しての感謝の気持ちが溢れていた。そして、前述したようにアンコールはandymori「クレイジークレーマー」のカバーに始まり、「高円寺にて」、そして「イマジネージョンは尽きない」といったロックソングたちを3人で演奏した。まるで「自分たちはどこからやってきたのか」を示すように。

「続・LOVE2」は、まるで永遠に記憶に残り続ける映画のワンシーンのように、愛を求めて彷徨うバンドの横顔を私の記憶に刻み付けた。そして、「さよなら、ぼくらのパーティーゲーム」はじんわりと温かく幸福な余韻となって、ライブが終わって数日経ち、この原稿を書いている今も私の身体を包んでいる感じがする。

Deuは相変わらずインタビューで「いつかバンドをやめる」と言っているし、彼の言葉は少なからずセンセーショナルなものにも受け止められるが、よくよく考えれば、彼はとても当たり前のことを言っているような気もする。人も、物事も、いつかは終わる。その事実を受け止めた上で日々を生きることと、そこから目を背けて生きること、どちらが豊かな生かと問われれば、私は前者と答えるだろう。本当に、PEOPLE 1には大切なことを気づかされてばかりいる。

 

PEOPLE 1 2023~2024 TOUR アリーナ特別公演セットリスト

1/13(Sat.) 神奈川・ぴあアリーナMM
“続・LOVE2”

1.愛について
2.さよならミュージック
3.GOLD
4.新訳:東京
5.紫陽花
6.YOUNG TOWN
7.夏は巡る
8.ハートブレイク・ダンスミュージック
9.君に金星
10.Outro (Because I Love You)
11.怪獣
12.銃の部品
13.DOGLAND
14.僕の心
15.新訳:ラヴ・ソング
16.アイワナビーフリー
17.フロップニク
18.常夜燈
19.113号室
<ENCORE>
20.エッジワース・カイパーベルト
21.魔法の歌

 

1/14(Sun.) 神奈川・ぴあアリーナMM
“さよなら、ぼくらのパーティーゲーム”

1.新訳:フロップニク
2.さよならミュージック
3.ドキドキする
4.エッジワース・カイパーベルト
5.魔法の歌
6.GOLD
7.Deadstock feat. きのぽっぽ
8.新訳:東京
9.銃の部品
10.Ratpark
11.怪獣
12.ハートブレイク・ダンスミュージック
13.アイワナビーフリー
14.鈴々
15.新訳:スクール!!
16.closer
17.僕の心
18.DOGLAND
<ENCORE>
19.クレイジークレーマー (cover)
20.高円寺にて
21.イマジネーションは尽きない